tainosato deta

データ集

岩ガキの思い出

牡蠣殻の山をみていると、父を思い出した。

磯から岩ガキをいっぱい採ってきたものの、殻がいっそ開かん。蒸しても開かん。ならばもっと火を通すしてコジ開けたら、なんと親指ほどしかない。クソっと思い、シンクの横にブチ投げとったら父がやってきた。

「ワシが開けちゃろう」

家に持ち帰り一時間後むき身をもってきた。なんとさすがは漁師。

持ってきたむき身は、殻の大きさの三分の一もない。山も川もない島は栄養塩が少ないので、貝類は図体だけはデカい。むき身を頬張ると思わず声が出た。

「うまい」

あれから数十年。まさか自分が牡蠣屋になろうとは思ってもみなかった。